今回の主役は「スティビオタンタライト」という宝石。
あまり見かけない珍しい宝石なので、「スティビオタンタライトって何?」という方も多いと思います。
スティビオタンタライトは、硫黄のようなネオンイエローのこんな宝石です。
カットされることが少なく、とても珍しいので、インターネットで調べてもあまり詳しいことは出てきません。
ちなみに、鉱物名が「タンタライト」という赤褐色の石もあります。
特徴的な名前が共通しているので仲間かな?と思ってしまいますが、鉱物名が違うので別の鉱物。
タンタルという珍しい元素を含むところが共通しているので、名前が似ているのかもしれません。
その他の特徴として、ざっくり分かっているのは下記のような点です。
1ct以下の小さなルースの比重について鑑別書では「〇の重液に浮かび、〇の重液に沈む」という形で記載されます。
4.0の重液に沈むというのは、1ct以下のルースで測れる限界を超えた比重ということ。
屈折率についても同様で、屈折計で測れる限界値が1.81なのでそれ以上という形で記載されています。
比重も屈折率も高く、毒性があるけれどジュエリー加工がOKという何とも個性的な特徴の石だということが分かります。
そして、やっと今回の本題ですが、ブラックライトを当てるとどうなるかというと…
見た目に反して、蛍光反応はありません。
しかし…
ブラックライトを一定時間照射すると、そこには明らかにネオン感を失って、こんがりと焼けた感じのスティビオタンタライトが…。
最初は困惑したものの、「あれ?!そういえばコレって元に戻るの!?」と不安な気持ちになります。
ドキドキしながら経過観察…
完全にネオン感を取り戻すまでには結構時間がかかりますが、ちゃんと元通りに。
ブラックライトを当てて変色し、時間の経過で元の色に戻るこの現象は「テネブレッセンス効果」と呼ばれています。
ハックマナイトなどでお馴染みの効果です。
でも、スティビオタンタライトにそんな効果があるなんて聞いたことがありません。
ソーティングをお願いしたルースだったので、日独宝石研究所さんに確認してみました。
その結果…
確かにブラックライトに反応しないのに、その後もライトを当て続けることは普通しないと思います。
でも、「ブラックライトを当てて変色し、時間経過で元に戻るのはテネブレッセンスで間違いなさそう」とのこと。
もう一度見てもらうついでに、ソーティングから鑑別書にグレードアップしてもらいました。
その結果…
今回の鑑別書には新しい写真と備考のコメントが!
どちらも「テネブレッセンス」についての証明です。
今回の問い合わせから、ただでさえ設定の多いスティビオタンタライトにさらに「テネブレッセンス」が追加されました。
ちなみに、宝石の種類によっては、ブラックライトを当てることで退色しやすいものもあります。
ブラックライトを当て続けることが推奨できない石もありますので、その点はご注意ください。
今回の記事が宝石をより楽しむための一助となりましたら幸いです。