宝石のなかには鑑別書が付くことによって価値が上がるものがいくつかあります。
なかでもパパラチアサファイアは、鑑別の有無や種類によって価値が大きく変わる宝石の代表です。
今回は意外と分かりにくい、パパラチアサファイアの鑑別について考察してみました。
宝石つむりでパパラチアサファイアという名前を使うとき、それは必ずソーティングまたは鑑別書が付いたルースになります。
どこの鑑別機関でも認定されていないもの(未鑑別)を当店ではパパラチアサファイアとしては扱いません。
その理由としては、明らかにパパラチアカラーだと感じるルースであっても、鑑別機関では認定されないケースも多々あるからです。
また、一般的には鑑別機関によって価値や価格が変わることから、基本的にはA.G.L(一般社団法人 宝石鑑別団体協議会)加盟の鑑別機関の鑑別のみを扱い、それ以外のルースについてはしっかりとご説明したうえでご紹介するようにしています。
パパラチアサファイアにはもちろん、共通の基準や定義があります。
しかし、意外と知られていませんが、全ての鑑別機関が同じ判定をするわけではありません。
分かりやすい例があるので、ご紹介いたします。
下記のパパラチアサファイアには中央宝石研究所の鑑別書がついています。
もちろん、中央宝石研究所の鑑別書がついていれば”問題のないパパラチアサファイア”という判断ができるのですが、見るからにオレンジが強く、両端にピンクの色だまりがあるような雰囲気で「この色は本当にパパラチアカラーなのだろうか?」と思っていました。
そこで、日独宝石研究所に鑑別を依頼してみたところ、「オレンジが強すぎるので、パパラチアサファイアとしては認定できない」という回答をもらいました。
ちなみに、このパパラチアサファイアは、天然のサファイアとしては奇跡のようなネオンオレンジと端の方に見えるピンクが本当に美しい一石なので、もう一度鑑別を取り直した際にパパラチアサファイアにならなかったとしても後悔はないと考えて入手しています。
それもあって、これ以上は依頼していないので他の鑑別機関の判断はわかりませんが、このように鑑別結果が同じにならないことがあるのです。
繰り返しになりますが、ひとつの鑑別機関でパパラチアサファイアとして認定された場合に、他の鑑別機関でも同じ結果になるとは限りません。
鑑別と聞くとなんとなく専門的な機械に通してチェックするようなイメージがありますが、パパラチアサファイアかどうかを判断するときに確認するのは色。
「パパラチアサファイアはオレンジとピンクの割合が半々くらいの色をしたサファイア」という定義がありますが、それぞれの鑑別機関が定義にそって、それぞれ色の幅の基準を設けていて、その基準が同じでないように感じます。
当てはまらないケースもあるとは思いますが、「この色はこの鑑別機関の鑑別が付いているケースが多い」というイメージをざっくりとまとめてみました。
確実な情報というよりは感覚的なお話になるので、参考程度に考えていただけますと幸いです。
GIAや中央宝石研究所の鑑別書が付いたパパラチアサファイアには茶色やオレンジといった色のルースが多い気がします。
稀にGIAでパープルを感じるピンク系のサファイアを見ることもあります。
DGLに関しては色幅が広く、ちょうど中間の色に感じられるものもあれば、ほぼピンクサファイアに見えるようなものも少なくありません。
私たちの感覚では日独宝石研究所の判断が一番イメージするパパラチアカラーに近い気がしますが、残念ながら、日独ソーティングのついたパパラチアサファイアの価値はあまり高くありません。
先ほどお話したように鑑別機関によって判断が異なる場合もあり、さらに鑑別した鑑別機関によって価格も価値も変わるのがパパラチアサファイアの特徴です。
当然、ルース自体の状態や色にもよるのですが、全く同じルースに鑑別がついていたと仮定すると、その証明書を発行した鑑別機関によって価格に差が出ます。
一般的に価格が高い順に並べると下記の通りです。
ちなみに、これは鑑別料金の高さともほぼ同じになります。
鑑別料金は通常、商品代金に含まれますので、そのまま価格に反映されるのは当然のことといえるかもしれません。
価格の高さはパパラチアサファイアの認定難度や、認定までに要する時間が長い順番とも比例し、そこに鑑別機関としての信頼度もプラスされる印象です。
これはパパラチアサファイアに限ったことではありませんが、海外の鑑別が付いたものが日本では認定されないケースは多々あります。
パパラチアサファイアのような中間色の宝石は見る環境によって色が変わって見えます。
それが日本国内と海外であれば、日差しの強さも照明の種類も違うでしょうし、環境が大きく異なるのが当然です。
つまり、鑑別した国ではパパラチアカラーに見えても、日本でも同じように見えるとは限らないということも考えられます。
海外のパパラチアサファイアのソーティングがついたルースを国内で鑑別に出すとルビーになったという話があるほどなので、色の判断が重要な宝石に関しては見覚えのない海外の鑑別機関には注意していただいた方が良いと思います。
もちろん、あたかもGIAが発行しているように見せるような怪しいソーティングもたくさんあるので、しっかりと内容を確認して発行元を確認することも大切です。
今回は一般的な価値という軸でパパラチアサファイアと鑑別書について考察してみました。
パパラチアサファイアについては、「とっておきの一石がいつか欲しい」というご要望をいただくことも多いです。
そういった際に少しでも参考にしていただけると嬉しいです。
もちろん、全てのルースに最適な鑑別書がついているわけではないので、未鑑別や見たことのない鑑別書が付いているルースでも、実は高品質なパパラチアサファイアだったということはあり得ると思います。
安心安全な鑑別付きのパパラチアサファイアを選ぶか、ご自身の目利きを信じてチャレンジしてみるか、いろいろな選択肢があると思います。
いつもの決まり文句のようになってしまって恐縮ですが、後悔のないお買い物をしていただければと祈っております。