【レポート】原石カット&研磨体験<前編>

2022年02月18日

ルースを手に入れたいと考えたとき、原石を探してきてカットして作るという方は少ないと思います。
また、原石とルースをそれぞれ見たことがあったとしても、どのような工程を経てゴツゴツの原石がキラキラのルースになるのか、具体的に想像することは難しいのではないでしょうか。

「歩留まり」「カットの質」といった基本的なことは理解していても、実際に体験する機会はなかなかありません。
そんな時、ちょうど原石からルースを作る体験にお誘いいただいたので、さらにルースへの理解を深めるべく参加してみることにしました。

まずは原石選び

原石磨きをされたことのある方は少なくないと思いますが、私は根気がたりなくて、以前原石を磨ききれなかった経験があったので実はちょっと不安でした。
でも、マシンを使ったカットと研磨については、手で磨けなかった人でも大丈夫ということでしたので、チャレンジすることに。

今回カットするのは、コーネルピンです。

コーネルピンは宝石つむりが初期のころからこだわっている、思い入れの強い宝石。
厚みがある方がカットしやすい気がしたので、ころんとした多色性の強い原石を選びました。

簡易秤ですが、原石時の重さは2.940ctでした。
これが最終的にはどこまで減ってしまうのか、ドキドキします。

プリフォーム①テーブル面を作る

最初にゴツゴツの原石をすりガラスのようなラフの形にしていくプリフォームという作業をします。
最初に作るのは、正面の大きくて平らなテーブル面。

この棒のような器具にくっつけて削っていきます。
上の部分がなんとなく平らに近い形になっていることにお気づきでしょうか。
なるべく原石を削る量を減らすように、どの部分をテーブルにするかを決めています。

カットと研磨に使うマシンはこちら。
水がしたたってくるあたりが、理科の実験室にありそうなちょっとワクワクする形です。

そして、体験はゴツゴツした部分を滑らかにする、プリフォームからはじまります。

失敗すると飛んでいくこともあると聞いて、最初はおそるおそる板に押し付けていましたが、だんだんやり方が分かってきました。
直角に押し付けて、まっすぐのテーブル面を作っていきます。

回転に逆らうように力を入れるように滑らせているうちに、かなり平らになりました。
一方で大好きなコーネルピンの原石が少しずつ、自分の手によって小さくなっていくという現象に「原石のままでもよいのでは…」とくじけそうな気持ちも沸いてきます。

プリフォーム➁お尻側(パビリオン)を削る

平らな面ができたら、棒を一度外してひっくり返し、平らな面を下に留め変えてお尻側を作っていきます。

まだ、平らな面があって転がりにくくなっただけのゴツゴツの原石の状態です。
こちらも同じように凹凸をなくすように、銅板に押し付けて削っていきます。

面を作るにあたって、こういう窪みは削ってなくす必要があります。
つまり、穴の底に合わせてかなり深く削ることになるので、心を強く持たなくてはなりません。

形はおかしいですが、とりあえず平らになりました。
この時点でどのくらい減っているのか測ってみます。

すりガラスのように全面の凹凸が削れたラフになった時点で2.390ct。
既に0.55ct減っています。

いよいよカット①パビリオンの面を作る

この体験では初心者でも作りやすい形ということで、八角形と六角形が選べます。
今回はプリフォームの形を見て、より大きく作れそうな六角形にすることにしました。

パビリオンは大きな面が6面ありますが、美しいルースにするには同じ角度の傾斜にする必要があります。
プリフォームの形から計算し、マシンに設計した角度を設定して6面を削っていきます。

同じように板を滑らせて、下の部分はかなりいびつですが、6面のファセットができました。
次はその上に小さな12面を作ります。

マシンで角度を合わせるので、あとは高さを調整しながら板に押し付けていくだけで、全く難しいことはありませんでした。

一番下の部分にあたる小さな12面ができました。
次にテーブルとパビリオンの間のガードルとクラウン(テーブルを囲む面)に当たる部分を作っていきます。

ここまでくると、かなりルースの形に近づいてきました。

次はポリッシュ①大きな面を研磨する

カットがひととおり終わったので、後で微調整の可能性はありますが、次の磨く工程に入ります。

同じマシンで銅板を亜鉛板に変えて、次は押し付けて削るのではなく、板の上を揺らすように滑らせて作業します。
スケートのようにするすると滑らせていると、すりガラスが透明になっていきます。

ここでやっと石の中の様子が分かります。

比較的、インクルージョンは多めです。
気泡のようなぷくぷくとしたインクルージョンがとても綺麗。

まだ、小さな面とガードル部分はすりガラスのようになっているので、富士山のような不思議な様子です。

ポリッシュ➁小さな12面を磨く

6面の上の部分に作った小さな面を同じように磨いていきます。
カットも研磨も計算した角度をマシンにセットして行うため、揺らす速度や押し付ける強さ以外に気にするようなことはありません。

小さな12面も磨いたので、パビリオン全体が透明になりました。
さらに板を変えて、研磨の仕上げをします。

細かいダイヤモンドの粒子を板に振りかけて、磨いていきます。

何周か同じ作業を繰り返すと、ピカピカ度が増してキラキラ光るようになりました。
かなりルースらしくなってきたような気がします。

第一回目の作業はここまで。
ゆっくりやっていると、ここまでの作業で半日かかります。

次の工程ではテーブル面を作っていきます。(後編は2月25日あたりの更新を予定しています)

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