先日、「ベニトアイトとタンザナイトの違いを知りたい」というお問い合わせをいただきました。
気になる方も多い話題かと思いましたので、コラムにまとめてみました。
今回は鉱物としての違いではなく、宝石としての魅力や希少性について比較した内容となります。
いうまでもなく、タンザナイトとベニトアイトは全く別の宝石ですが、いくつか共通点があります。
思いつくものを挙げてみます。
どの宝石にも例外的な個体は存在しますが、一般的な特徴としては上記のような点が挙げられると思います。
どちらも多色性の強い宝石ではありますが、一般的には多色性の色が違います。
多色性をチェックする簡易ツールの二色鏡を使って確認できます。
タンザナイトはパープルとブルーの多色性を示します。一方、ベニトアイトは濃いブルーと淡いヴァイオレット~ブルーの多色性を示します。
多色性の強い宝石は角度を変えると色が違って見えるのが魅力です。
宝石に光が当たった時に放たれる七色の輝きのことをファイアと呼びます。
通常、ファイアが確認できるとされるのは分散度の高い宝石のみです。
ベニトアイトは分散度が0.044、タンザナイトはその半分以下です。
当然、品質や色によっても変わりますが、ダイヤモンドが0.04なので、ベニトアイトはダイヤモンドよりも輝きが強く、ファイアがより見えやすい傾向にあります。
共通点と違いについてまとめたところで、それぞれの魅力や特徴について考えてみます。
ベニトアイトは分散度の高さが特徴のひとつとなることもあって、ファイアや輝きが最大の魅力となります。
ブルーダイヤモンドはあまりにも希少でダークな色が多いため、ファイアを楽しめるという印象はあまりありません。
それもあって、ブルー系の宝石でファイアが一番強い石ともいえるのではないでしょうか。
タンザナイトの最大の魅力は多色性ではないでしょうか。
傾けるたびに色が変わる様子は、タンザナイトもゾイサイトもとても見ごたえがあります。
また、輝きすぎないことは色を楽しみやすいことにもつながります。
深くネオン感の強い美しい色を輝きに邪魔されずに楽しめるのも魅力の一つだと思います。
ベニトアイトについてはもともと数が少ないため、高価な金額で流通していました。
近年、商業的な採掘が終了してしまったということもあり、さらに値上がりが始まっています。
今後も希少性の高まりから、さらに価値が上がっていくことが予想されています。
一方、タンザナイトは比較的産出量の多い宝石です。
しかし、タンザニア政府が国外への持ち出しを禁じているという話があり、徐々に流通量が少なくなってきているようです。
タンザナイトの鉱物標本は既に値上がりし、数も減っていると聞きますので、ルースの方にもこれから影響が出るのではないかと予想しています。
私が最初にタンザナイトに出会ったのは、何年も前の話です。
ミネラルショーで突然たくさんの業者さんが扱っていて、興味はあったものの、たくさんあったので「今度にしよう」と思って手に取りませんでした。
その後、興味を持つ機会があって探したら、あれほど出回っていたのに美しいものはほとんど見かけない状況になっていました。
その数年後、また店頭で見かけるようになるのですが、宝石というものは本当に一期一会で、その時に手に入れないと後悔することもあるというのを実感したのを覚えています。
逆にベニトアイトはほとんど日本に流通していない時期に一つだけ見つけて飛びついて、かなり高値で手に入れて後悔したという経験があります。
そういった部分の見極めは難しいところです。
私たちのコラムが、少しでも後悔の少ないお買い物をしていただくための一助となれることを祈っております。