アレキタイプガーネットと呼ばれる通り、上質なカラーチェンジガーネットはプロでも見間違えるほどにアレキサンドライトに似ているものもあります。
「仕入れたアレキサンドライトが、鑑別に出したらガーネットだった…」
そんな言葉を取引先の方から聞くことも。
そんな、宝石のプロでも間違えてしまうことのあるアレキサンドライトとカラーチェンジガーネットですが、宝石つむりでも使用している3つのツールで簡易チェックすることができます。
記事の最後に動画もありますので、参考にしていただけると幸いです。
まず、この記事の簡易鑑別の対象となるアレキサンドライトについて簡単にご説明いたします。
アレキサンドライトはカラーチェンジ効果のあるクリソベリルです。
地色はブルー~グリーンの黒っぽい、色の濃いものが多いです。
白熱灯を当てることで、パープル~レッドにカラーチェンジします。
ロシアやブラジル、スリランカ、インドなどで産出しますが、産地によって地色やカラーチェンジの色は異なります。
工業用やジュエリーなどにも使用される合成アレキサンドライトも存在しますが、今回は天然アレキサンドライトのみを対象とした記事になります。
この記事の対象となるカラーチェンジガーネットは、ブル~グリーンのタイプで白熱灯を当てることでパープル~レッドにカラーチェンジするガーネットです。
アレキサンドライトと似ているため、アレキタイプガーネットやアレキガーネットと呼ばれることもあります。
マダガスカルのべキリーが産地としては有名ですが、スリランカなどでも産出します。
ちなみにべキリー産のガーネットがすべてブルーでカラーチェンジするというわけではありません。
べキリー産ガーネットにもいろいろな色があって、そのうちのブルー~グリーンのものがカラーチェンジガーネットと呼ばれます。
アレキサンドライトとカラーチェンジガーネットを見分けるために今回使用するツールはこちらの3点です。
このほか、屈折計など他にも社内ではチェックする項目がありますが、今回は比較的用意しやすいこの3つのツールを使用した簡易鑑別の方法をご説明いたします。
ブラックライト(UVライト)には製品によって違いがあるため、定義することは難しいのですが、ここではいわゆる一番簡単に手に入れられる、安価なタイプのブラックライトを「通常のブラックライト」と定義しています。
通常のブラックライトを当てることで、それぞれ下記の変化があります。
ただし、アレキサンドライトにも蛍光反応が弱いタイプがあります。
反応がないように見える場合は黒いものに乗せて検査すると、蛍光が確認できることも。
この検査は最も簡易的な検査となり、蛍光すればアレキサンドライトの可能性が高いですが、ここで蛍光しないからといってアレキサンドライトではないと断言はできません。
通常のブラックライトで反応が分かりにくかった場合、もう少しパワーの強い、紫味の少ないライトを当ててみます。
こちらは標本や鉱物などを扱うショップなどではおなじみのライトとなります。
蛍光反応の弱いアレキサンドライトでも、このライトを当てると多くのものに反応が見られると思います。
こちらも分かりにくい場合には黒いものに乗せて反応をチェックします。
蛍光反応を確認したら、最後に二色鏡(または偏光板)で多色性を確認します。
二色鏡は多色性を分かりやすく可視化するツールですが、比較的高価なものとなりますので、偏光板というフィルムのようなもので代用することも可能です。
二色鏡で確認すると、アレキサンドライトとカラーチェンジガーネットには下記の違いがあります。
多色性が見えやすい角度はルースによって異なりますので、分かりにくい場合には角度を変えたりして複数回確認するとよいと思います。
どの角度でも違いがない場合は多色性がないと判断します。
今回ご紹介したのは比較的簡単にできる簡易鑑別です。
例えばお手持ちのルースが混ざって分からなくなってしまった場合や、ミネラルショーなどで未鑑別のルースの購入を検討する際に知っていると便利な知識です。
上記の方法で反応が分かりやすいルースであれば、誰にでもすぐに見分けることができます。
ただし、飽くまでも簡易的な鑑別となり、例えばアレキサンドライトが合成か天然かといったチェックはできません。
高級なルースなどのご購入を検討される場合にはやはり鑑別機関に確認してもらうことをおすすめします。