【レポート】原石カット&研磨体験<後編>

2022年02月23日

原石のカット&研磨体験後編です。
前編ではルースの裏側に当たる、パビリオン側を作りました。
今回は表面のテーブルとクラウン部分を作っていきます。

前編はこちら↓
https://tsumuri.co.jp/5741/

ゴールの形

ちなみに、最終的に目指すゴールはこんな形です。

普段、検品で何気なく見ている形ですが、細かく見ると下が二段カットされていて、上部はガードル、クラウン、テーブルの3部構成になっているのが分かります。

今回はこの上の部分を作っていきます。

まずは棒を外すところから…

1週間ぶりに会ったコーネルピンはこのような形になっていました。
これは作業に使用する棒を平行に付けるための器具です。

前回までのカットで使用していたのが上側の棒。
今回は上の棒を外し、新しく付けてもらった下側の棒を使用して作業します。

使用している接着剤が80度で溶けるため、アルコールランプで棒を熱して熱伝導で外していきます。
熱し過ぎると反対側の棒も外れてしまうため、注意が必要です。

慎重に加熱して、綺麗に外れました。
外れたら、カット面を台に平行に当てるための角度調整をします。

単純な仕組みに見える器具ですが、こう見えて精密で高級なものだそうです。

クラウン部分のカット

いよいよ表側のカットの作業に入ります。
まずはクラウンを作るところから。

パビリオンの時と同じで、計算した角度にマシンを設定し、銅板で少しずつ削っていきます。

削る前の状態では、ガードルとクラウンが同じ面に同居しています。
つまり、クラウンを削れば削るほどガードル部分が薄くなるイメージです。

少しずつ、クラウンの部分ができてきました。
まだまだ、平面になっていない部分が残っているので、残さずカットしていきます。

画像のような窪みがなくなるまでどんどん削っていきます。
この原石はガードル・クラウンに当たる部分の厚みが多めにとれましたが、この部分の厚みが少ない時にはガードルがシャープになり過ぎないように慎重に作業しなくてはいけません。

テーブル面のプリポリッシュ

クラウンの形ができたので、次はテーブル面のプリポリッシュです。

すりガラス状ではありますが、かなりルースらしい形になっています。

頭から板に押し付けると、なんとなく虐待しているような落ち着かない気持ちになります。
幸いにもテーブル面はすぐに磨けるので短時間ですみました。

プリポリッシュの状態ですが、テーブル面が磨けると、中に宇宙が見えました。
一部がすりガラス状のこの状態は一部だけ覗ける蛍石の標本のような味わいがあって、これ以上研磨するのがもったいない気持ちになりますが、とにかくポリッシュを続けていきます。

クラウン・ガードルのプリポリッシュ

テーブルの周りのクラウン部分をプリポリッシュしていきます。

ほとんど、普段見るルースのような状態になりました。
クラウンと比較すると、ガードルのポリッシュはもう少し慎重さが必要です。

ガードル部分はそのまま全体のミリ数となりますので、削れば削るほどサイズが小さくなるからです。
場合によっては、サイズをとるか美しさを取るかの選択を迫られることもあります。

今回はあまり削りたくなかったので、サイズ重視にしました。

プリポリッシュが終わったら、そのまま板を変えてガードルの仕上げに入ります。
ダイヤモンドの粉を板に振りかけて、石を擦っていきます。

最後のポリッシュでは、右側の斜線が入った部分もツルツルにするレベルを目指して作業していきます。
光をうまく当ててルーペで見ないとここまでは分からないので、磨く作業よりもチェック作業に時間がかかります。

クラウンのポリッシュ

ダイヤモンドの粉を足して、どんどんポリッシュしていきます。

ダイヤモンドの粉を板に蒔いて、遠心力を利用して広げると不思議な模様ができます。
この黒い粉がある部分で研磨していきます。

クラウン部分を磨いたら、もうほとんど通常のルースと変わらない見た目に。

テーブルも磨いて、中のインクルージョンが見渡せるようになりました。
これでカットと研磨の作業は終了です。

棒を外して、接着剤を溶かす

最後の難関、棒を外す作業です。

後編の最初の工程と同じで80度まで熱して、接着剤を溶かして外します。

棒を外した時に接着剤がくっついている様子は、何かに共生するジプサムの鉱物標本のようです。
この接着剤については時間をかけてアセトンで溶かしていきます。

アセトンに接着剤が溶けるのをひたすら待ちます。

やっと取れて、おなじみのルースが現れました。

綿棒で丁寧に拭き取っていきます。
拭かれているコーネルピンがとても可愛らしい気がします。

ラストの計測!

最後にどこまで減量したのか、ドキドキの計測タイムです。

最後の計測では0.755ctでした。

ありし日の原石時代は2.940ct。
つまり、2.185ctの減量に成功したということです…。

原石の形によって変わりますが、今回の体験では原石の約25%の重さのルースが出来上がったという結果でした。
この体験では歩留まりをそこまで重視していないので、25%という数値はかなり良い結果のようです。

完成したルース

カットや研磨の経験がゼロの私でもルースを作ることができました。

なんというか、とても普通のルースです。
自分が作ったなんて、何度見ても信じられない気持ちになります。

もちろん、カットする方向や角度、棒の取り外しなどの経験が必要な部分はお願いしています。
一人で作れるようになるにはもう少し経験が必要となりそうですが、マシンを使ってサポートを受ければ初心者でもルースを作ることが可能。

小田さんが二色鏡の画像も勢いで撮影していましたので、そちらも掲載しておきます。

原石の時と変わらず、とてつもなく多色性の強いルースが出来上がりました。

今回の学び

これまでも、ルースの品質を見るためにいろいろな観点からチェックしていました。
ただ、それぞれの欠点についての理由など、予想・想像していた部分が、自分でカット・研磨することで本質的に理解できた気がします。

カットや研磨についてはこだわればこだわるほどに、歩留まりが悪くなったり、時間が多くかかったりすることも、とてもよく分かりました。

今回はほたるみねらるさんのご協力で体験させていただきました。
また、体験の様子はグリラボさんのTwitterでもご紹介いただいています。

グリラボさんでは準備が整い次第、カット&研磨体験の希望者募集を予定しているそうですので、ご興味のある方はツイートをチェックしてみてください。

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